映画監督・プロデューサー(イギリス)。「アルフレッド・ヒチコック」などと表記・発音されることもある。これまでの映画史上において、関係者・一般人を問わず万人に幅広く影響を及ぼした、最も偉大な映画監督の1人と見なされている。「スリラーの神様」「サスペンスの巨匠」などと呼ばれ、60年以上のキャリアにおいて50本以上の名作を残し、今なお映画製作に携わる者や映画ファンの多くから崇拝されている人物。独特のスタイルで観る者を魅了し、恐怖や不安を巧みな演出で盛り上げるサスペンスの手法は、当人の死後から現在に至るまで、他の監督によって生み出された数々の作品でも尊敬の念とともに模倣されている。
代表的な作品には、アンソニー・パーキンスやジャネット・リーが出演した1960年のサイコスリラー映画「サイコ」や、アーネスト・レーマンが脚本を手掛け、ケーリー・グラントが主演を務めた1959年のスパイスリラー映画「北北西に進路を取れ」、ジェームズ・ステュアートやグレース・ケリーが出演した1954年のサスペンス映画「裏窓」など、枚挙に暇がない。
そのほかの監督作品には、「見知らぬ乗客」「ダイヤルMを廻せ!」「ハリーの災難」「泥棒成金」「知りすぎていた男」「めまい」「鳥」「トパーズ」「ファミリー・プロット」「間違えられた男」「山羊座のもとに」「パラダイン夫人の恋」「白い恐怖」「逃走迷路」「スミス夫妻」「バルカン超特急」「間諜最後の日」「レベッカ」「サボタージュ」「暗殺者の家」「三十九夜」「殺人!」「ジュノーと孔雀」「恐喝」「ふしだらな女」「農夫の妻」「疑惑の影」「リング」「快楽の園」などがある。なお、自らの作品にたびたびカメオ出演していることでも知られている。
また、アメリカ合衆国における人気テレビ番組として「ヒッチコック劇場」があり、原作やプロデュースを手掛けた作品(主にミステリー・ドラマ)を放送していた。当作品は、団鬼六の翻訳、熊倉一雄らの吹き替えにより、日本でも繰り返し放送された。
主な受賞歴に、アカデミー賞(作品賞、アービング・G・タルバーグ賞)を始め、AFI賞(生涯功労賞)、ゴールデングローブ賞(セシル・B・デミル賞、テレビ功労賞)、英国アカデミー賞(フェローシップ賞)、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞(監督賞)、全米監督協会賞(D・W・グリフィス賞)、ベンガル映画ジャーナリスト協会賞(外国監督賞)、ニューヨーク映画批評家協会賞(監督賞)、サン・セバスティアン国際映画祭シルバー・シェル賞など、多数。そのほか、ノミネートは数えきれないほどに上る。
死因は、腎不全であった。80歳。晩年は歩行も困難になるほど体力が衰え、特に最後の数ヵ月は自宅で寝たきりの生活だったという。