老衰について考える

「どのような死に方をしたいか?」と問われた時、あなたは何と答えるでしょうか。苦痛を感じず、眠るように死にたい、というのが、多くの方の本音ではないでしょうか。そしてほとんどの場合、それは老衰を意味するものと考えられます。自然死(老衰によって亡くなること、諸機能の生理的な衰えのために亡くなること)と呼ばれることもあり、厳密には使い分ける局面もあるかもしれませんが、ここでは同義として「老衰」という言葉を使って話を進めます。

老衰とは?

いわゆる老衰とは、「寿命を全うして自然に亡くなること」であるというのが一般的な解釈かと思われます。Wikipediaによれば、

「老衰(ろうすい、英語: Senility)とは、加齢により脳を含めた全臓器・細胞の力がバランスを保ちながらゆっくり命が続かなくなるレベルまで低下していき、最後に下顎呼吸後に死亡することである。現代の医療では、どんな病気だとしても、老衰を目指した治療やケアをしている。最も苦痛の無い死に方であり、末期癌のように自我や意識があるのに一部の臓器だけ極端に悪いのと異なって意識も無いために全く本人は苦痛を感じない。」

from Wikipedia

とあります。この、「最も苦痛のない死に方」「全く本人は苦痛を感じない」の部分が非常に重要であって、まさに多くの人が老衰で亡くなることを望む最たる理由と言えるでしょう。

寿命とは?

寿命とは、命の限界であり、生物のみならず物や事象についてこの言葉を使うこともありますが、通常は生物について言及する際に用い、病気や事故などによらず自然に亡くなるまでの期間を指します。まさに老衰によって亡くなるまでの期間です。

寿命は、生物の種類によって大きく異なる上、我々同じ人間であっても、性別や種族によって違います。日本人の平均寿命は、男性が81歳前後、女性が87歳前後というのが、近年の統計データのようです。ただしこれは、医療や介護などに依存することなく、自らの力で心身の生命を維持し、自立した生活ができる期間を表す「健康寿命」とは異なります。健康寿命はこれよりも8歳~12歳程度少なく(若く)なるようです。

食生活の進化を始め、様々なヘルス関連の情報や製品が世の中に溢れている昨今、平均寿命は上がる一方かと思いきや、ここ最近でも前年を下回るケースがあるようです。また、大きな災害の発生などにより、多くの方が亡くなった場合は、平均寿命が下がる恐れもあります。記憶に新しいところでは、東日本大震災の影響を受けた2011年は、平均寿命が前年を下回ったそうです。

とはいえ、例えば、昭和初期の日本人の平均寿命は、45歳前後だったそうですから、長い人類の歴史の中で、平均寿命が伸びていることは間違いありません。生物学的にはいったいいくつまで伸びることが可能なのだろうかと、頭をひねってしまいます。

老衰で亡くなる方は増加傾向にある

近年の日本では、老衰で亡くなる方が増えているそうです。脳梗塞などの脳血管疾患や、癌といった上位に位置する死因に続くものとして、老衰の他に死因が考えられない自然死が増加傾向にあるとのこと。要因として、後期高齢者、特に90歳以上の超高齢者が増えていることが挙げられるそうで、年を追うごとにますます高齢化が進む日本では、この傾向が今後も続くものと思われます。

老衰で亡くなった有名人

ちなみに、当サイトで「老衰」もしくは「自然死」で検索すると、合わせて180名以上※)の方が該当します。割合で言えば、全体の5%~6%です。これを多いと見るか、少ないと見るかは、それぞれの判断にお任せするとしても、残りの90%以上は、何らか他の原因で亡くなっている訳です。そう考えると、老衰によってこの世を去るのがそれほど簡単なことではないと感じざるを得ないのですが、いかがでしょうか。有名人の訃報を耳にした際、その死因が「老衰」であることを聞くと、悼む気持ちの中にもわずかな安堵を感じてしまう方は多いはずです。
※2023年2月現在

最後に余談ですが、「大往生」という言葉があり、本来は「苦しまずに安らかな死を迎えること」という意味で、まさに老衰を指す言葉ですが、一方で、「立派な亡くなり方をされた」という意味も含みます。ただ、立派に亡くなったかどうかは本人もしくは遺族の方が決めることであり、第三者がとやかく言うことではないかもしれません。実際、遺族に向かってこの言葉を使うのは失礼に当たるようです。

 
以上、今回は老衰についてつらつらと書き連ねてみました。老衰以外の死因である、癌(がん)や肺炎などについて考察した以下の記事も、ぜひご参照ください。
→ 亡くなった有名人の死因考察

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