新藤兼人

(しんどうかねと)
映画監督・脚本家。株式会社近代映画協会の創設者・会長。女優である乙羽信子の夫。映画プロデューサーで、株式会社近代映画協会の社長なども務めた新藤次郎の父。広島県の名誉県民であるほか、広島県広島市、および広島県三原市の名誉市民でもある。文化勲章受章者。

1951年、自伝的に自らの下積み時代をテーマとしたモノクロ・スタンダード映画「愛妻物語」で監督デビューを果たす。以後、思想や表現の自由を追求しながら数々の作品を世に送り出した。自主制作映画(インディペンデント映画)のパイオニアとも言われている。

代表的な作品には、戦後日本を代表する女優である杉村春子の最後の主演映画であり、妻である乙羽信子の遺作となった1995年の「午後の遺言状」や、豊川悦司や大竹しのぶが出演し、映画監督として日本最高齢を記録した2011年の「一枚のハガキ」(遺作)などがある。

そのほかの監督作品(映画)には、「雪崩」「触角」「裸の十九才」「原爆の子」「女の一生」「讃歌」「鉄輪」「心」「銀心中」「どぶ」「流離の岸」「竹山ひとり旅」「ある映画監督の生涯」「海の野郎ども」「ドキュメント8.6」「絞殺」「悲しみは女だけに」「第五福竜丸」「北斎漫画」「花嫁さんは世界一」「裸の島」「濹東綺譚」「さくら隊散る」「生きたい」「人間」「三文役者」「母」「ふくろう」「本能」「性の起原」「強虫女と弱虫男」「藪の中の黒猫」「花は散れども」「ブラックボード」など、多数。

また、脚本を手掛けた映画作品はさらに多い。その数は優に350本を超えると言われている。主のものに、「南進女性」「大いなる旅路」「猛獣使ひの姉妹」「女性の勝利」「待ちぼうけの女」「大いなる驀進」「がんばれ!盤嶽」「結婚」「女の勲章」「安城家の舞踏会」「熱愛者」「家庭の事情」「黒蜥蜴」「偉大なるX」「わが生涯のかがやける日」「裁かれる越前守」「森の石松」「朱唇いまだ消えず」「斬る」「しとやかな獣」「真昼の円舞曲」「長崎の鐘」「傷だらけの山河」「沙羅の門」「卍」「暁の追跡」「赤城から来た男」「座頭市海を渡る」「源氏物語」「村八分」「女ひとり大地を行く」「眠れる美女」「華岡青洲の妻」「夜明け前」「軍旗はためく下に」「姉妹」「銀座の女」「昭和枯れすすき」「美女と怪龍」「配達されない三通の手紙」「四十八歳の抵抗」「映画女優」「積木くずし」「禁じられた唇」「美徳のよろめき」「宮澤賢治 その愛」「真夜中の顔」「からたち日記」「その壁を砕け」「電話は夕方に鳴る」「おもちゃ」「大河の一滴」「完全なる飼育」「HACHI・約束の犬」など、枚挙に暇がない。

映画のみならず、テレビドラマでも多くの作品で脚本を手掛けている。その一部として、「天皇の世紀」「新・座頭市(シリーズ)」「赤穂浪士」「リツ子・その愛」「考古学者(シリーズ)」「松本清張の風の息」「芙蓉の人」「黒い福音」「女たちの大坂城」「松本清張事件にせまる」「ゼロの焦点」などがある。

著書に、「ある映画監督の生涯」「女の一生 – 杉村春子の生涯」「断腸亭日乗を読む」「追放者たち」「ながい二人の道 – 乙羽信子とともに」「歳月は風の吹くままに」「老人読書日記」「シナリオ人生」「午後の遺言状」「日本シナリオ史」「ふくろう90歳の挑戦」「愛妻記」「いのちのレッスン」「新藤兼人の足跡」など、多数。

受賞歴に、日本アカデミー賞(最優秀監督賞、最優秀脚本賞、特別企画賞)、東京国際映画祭審査員特別賞、ブルーリボン賞(監督賞、作品賞、企画賞)、毎日映画コンクール(監督賞、脚本賞)など。

東京都港区にある自宅にて死去。死因は、老衰であった。100歳。約1ヵ月前に開催された100歳の誕生会では、百寿を祝う人々を前に自ら最後の挨拶であると宣言した上で、「どうもありがとう。さようなら。」の言葉を残した。

タイトルとURLをコピーしました