柳瀬尚紀

(やなせなおき)
英文学者・翻訳家・エッセイスト(随筆家)。20世紀で最も重要な作家の1人とされるジェイムズ・ジョイス(アイルランド)が手掛けた作品の翻訳などで有名。

北海道根室市に生まれ、早稲田大学を卒業後、同大学大学院に進学。卒業後、1977年に東京都世田谷区に本拠を置く私立大学である成城大学の助教授に就任。1991年に退職するも、以後、上述したジェイムズ・ジョイスの作品を始め、アメリカの女性作家であるコレット・ダウリングが提唱した概念および著作である「シンデレラ・コンプレックス」など、アヴァンギャルドな文学作品を数多く翻訳した。

代表的な翻訳作品に、上述したコレット・ダウリングの「シンデレラ・コンプレックス」のほか、「トロール」(B・S・ジョンソン)、「ボルヘスとの対話」(リチャード・バーギン)、「パラドクスの匣」(ジョージ・ブレヒト、パトリック・ヒューズ)、「ニューヨークの猫たち」(テリー・ドゥロイ・グルーバー)、「核戦争ブラック・ブック」(マーク・イアン・バラシュ)、「マルセル・デュシャン論」(オクタビオ・パス)、「王」(バーセルミ)、「ラブストーリー、アメリカン」(キャサリン・テクシエ、ジョエル・ローズ)、「ケロッグ博士」(T・コラゲッサン・ボイル)、「ブランコあそびにいくんだい!」(ケイト・クランチィ)、「天使のえんぴつ」(クェンティン・ブレイク)、「カタツムリと鯨」(ジュリア・ドナルドソン)、「窓から逃げた100歳老人」(ヨナス・ヨナソン)、「リスからアリへの手紙」(トーン・テレヘン)、「シルヴィーとブルーノ」「もつれっ話」「不思議の国の論理学」「かつらをかぶった雀蜂」「ふしぎの国のアリス」「鏡の国のアリス」(以上、ルイス・キャロル)、「ファニー」「あなた自身の生を救うには」「魔女たち」「ブルースを、ワイルドに」(以上、エリカ・ジョング)、「チョコレート工場の秘密」「すばらしき父さん狐」「奇才ヘンリー・シュガーの物語」「ダニーは世界チャンピオン」「したかみ村の牧師さん」「一年中わくわくしてた」「きゃくいんソング」(以上、ロアルド・ダール)など、多数。

上述したジェイムズ・ジョイスの作品では、「ダブリナーズ」「フィネガンズ・ウェイク」「ユリシーズ」など。

著書(編著・共著を含む)に、「翻訳困りっ話」「翻訳からの回路」「ノンセンソロギカ」「ズーっとみんななかよしニャンだ」「フィネガン辛航紀」「ジェイムズ・ジョイスの謎を解く」「辞書はジョイスフル」「翻訳はいかにすべきか」「猫舌流英語練習帖」「猫舌三昧」「辞書を読む愉楽」「猫と馬の居る書斎」「日本語は天才である」「日本語ほど面白いものはない」「ことばと遊び、言葉を学ぶ」「やるっきゃない英文読解」「突然変異幻語対談」「猫百話」「ジャック&ベティの英語力で英語は読める」「ことば談義寐ても寤ても」「勝ち続ける力」などがある。

主な受賞歴に、日本翻訳大賞、BABEL国際翻訳大賞、日本翻訳文化賞、日本雑学大賞など。

死因は、肺炎であった。73歳。なお、亡くなったのは、上述したジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」(全3冊)の翻訳中であった。従って当作品の翻訳は未完となっている。

タイトルとURLをコピーしました