（なかむらひろこ）
ピアニスト。小説家・芥川賞作家である庄司薫の妻。世界各国のコンクールで審査員を務めるなど、世界的なピアニストとして有名。紫綬褒章・旭日中綬章受章者。
1944年、山梨県東山梨郡（現在の甲州市）に生まれ、3歳より井口愛子に師事。幼少時代からその才能を発揮し、1954年には10歳にして全日本学生音楽コンクールピアノ部門（小学生の部）で全国第1位を獲得。慶應義塾中等部に進学後、1958年にも全日本学生音楽コンクールピアノ部門（中学生の部）で全国第1位を獲得。さらに翌1959年には、日本放送協会（NHK）と毎日新聞社が主催するクラシック音楽の権威あるコンクールで、若手音楽家の登竜門ともされている伝統的な「日本音楽コンクール」にて、史上最年少で第1位特賞を受賞した。翌1960年には、岩城宏之が指揮した東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会に招かれ、ソリストとして演奏。さらに同年、NHK交響楽団初の世界一周公演のソリストに抜擢され、天才少女として一気に世界のスターダムにのし上がった。
1965年には、ポーランドの首都ワルシャワでフレデリック・ショパン研究所が開催する世界的なピアノコンクール「フレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクール」において、日本人として歴代2人目の入賞者となったほか、最年少者賞を受賞したことでさらにその名声を確固たるものにする。
以後、世界各国で演奏活動を展開する傍ら、数々の世界的なピアノコンクールで審査委員や審査委員長を務めるなど、後進の育成にも尽力。一方で、数々の著作も発表した。
上述したコンクールでの優勝や入賞以外の主な受賞歴に、大宅壮一ノンフィクション賞、エクソンモービル音楽賞、日本芸術院賞など、多数。
著書に、大宅壮一ノンフィクション賞の受賞作品である「チャイコフスキー・コンクール – ピアニストが聴く現代」を始め、「私の猫ものがたり」「ピアニストという蛮族がいる」「国際コンクールの光と影」「アルゼンチンまでもぐりたい」「コンクールでお会いしましょう」「ピアニストだって冒険する」などがある。
死因は、大腸癌であった。72歳。2014年に腸閉塞の手術を受けた際、大腸癌に罹っていることが発覚し、闘病生活を続けていた。翌2015年以降は、音楽活動を休止して治療に専念。2016年4月から5月にかけて一時復帰を果たしたものの、ついに完全復帰はならず、死去してしまった。
