田中絹代

(たなかきぬよ)
女優・映画監督。「田中錦華」(たなかきんか)の芸名で活動していた時期もあった。日本映画が登場した黎明期より活躍してきた女優として、銀幕の歴史を語るには欠かせない人物の1人。紫綬褒章・勲三等瑞宝章受章者。

山口県下関市に生まれ、1924年8月に松竹下加茂撮影所(のちの京都撮影所)に入社。同年10月には野村芳亭が監督を務めた時代劇「元禄女」で早くも映画デビューを果たし、女優としての第一歩を踏み出した。さらに同年、清水宏が監督を務めた「村の牧場」では主役に抜擢され、一気にスターダムにのし上がることになる。以後、数々の映画に出演する傍ら、テレビドラマなどでも活躍。老若男女を問わず広くお茶の間の人気を博し、大スターの一員となった。

出演した主な映画には、上述したデビュー作「元禄女」や、初めて主演を務めた「村の牧場」を始め、「小さき旅芸人」「一心寺の百人斬」「あら!呑気だね」「清水次郎長全伝」「お坊ちゃん」「天王寺の腹切り」「真珠夫人」「近代武者修行」「天晴れ美男子」「輝く昭和」「母よ君の名を汚す勿れ」「大学は出たけれど」「新女性鑑」「落第はしたけれど」「愛よ人類と共にあれ」「お嬢さん」「応援団長の恋」「忠臣蔵」「青春の夢いまいづこ」「男性対女性」「人生のお荷物」「私の兄さん」「愛染かつら」「私には夫がある」「母と子」「花のある雑草」「女性の覚悟」「元気で行かうよ」「十日間の人生」「坊ちゃん土俵入り」「歌麿をめぐる五人の女」「思い出のアルバム」「西鶴一代女」「おかあさん」「煙突の見える場所」「獅子の座」「月は上りぬ」「あやに愛しき」「王将一代」「黄色いからす」「流れる」「この天の虹」「悲しみは女だけに」「別れて生きるときも」「おとうと」「太平洋ひとりぼっち」「死闘の伝説」「赤ひげ」「男はつらいよ・寅次郎夢枕」「三婆」「おれの行く道」「溝口健二の記録」「大地の子守歌」「北の岬」など、多数。

出演したテレビドラマには、「樅ノ木は残った」「二人の星」「桃太郎侍」「りんりんと」「惜春の歌」「たった一人の反乱」「前略おふくろ様」「雲のじゅうたん(ナレーション出演)」などがある。

映画監督としてメガホンを握った作品には、「月は上りぬ」「恋文」「流転の王妃」「乳房よ永遠なれ」「女ばかりの夜」「お吟さま」など。

そのほか、1960年および1970年にNHK(日本放送協会)の年末恒例大イベント「紅白歌合戦」で審査員を務めたほか、「銀幕(エクラン)ぶし」「愛の紅椿」といった楽曲も発表している。

主な受賞歴に、毎日映画コンクール女優演技賞、同女優助演賞、ベルリン国際映画祭最優秀女優賞、キネマ旬報賞(女優賞)、芸術選奨文部大臣賞などがある。

東京都文京区にある病院にて死去。死因は、脳腫瘍であった。67歳。2ヵ月ほど前に強い頭痛を訴えて緊急入院していたが、症状は良くならず、数日後には視力まで失ってしまった。本人は、目が見えなくなってもなお、女優としての復活を諦めていなかったという。

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