アッバス・キアロスタミ

映画監督・脚本家(イラン)。イラン映画界の巨匠として有名。フランスのレジオンドヌール勲章、日本の旭日小綬章などを受章している。

1940年、イランの首都テヘランに生まれ、同地に本拠を構えるテヘラン大学を卒業後、1970年に映画監督としてデビューを果たす。デビュー作は、白黒・10分の短編映画「パンと裏通り」であった。この作品は、少年がパンの塊を抱えて家路を急ぐ際、空腹の犬に遭遇、安全が脅かされるという内容で、同年代の男の子であれば主人公の状況や心持に大いに共感できるもの。以後、当人の映画作品には、少年を主人公に起用したものが多い。また、日本の映画監督・脚本家である小津安二郎のファンであることを公言しており、作品にもその影響が見られる。

代表的な監督作品には、ババク・アハマッドプールが出演した1987年のドラマ映画「友だちのうちはどこ?」、ファルハッド・ケラドマンドやプーヤ・パイヴァールが出演した1991年の映画「そして人生はつづく」、ホセイン・レザイ、モハマッド・アリ・ケシャワーツ、ファルハッド・ケラドマンドらが出演した1994年の映画「オリーブの林をぬけて」などがある。なお、これらは3部作として高く評価され、イラン映画界を代表する監督としての地位を確固たるものとした。

そのほかの作品には、「トラベラー」「クローズ・アップ 」「ホームワーク」「桜桃の味」「ABCアフリカ」「風が吹くまま」「シーリーン」「ライク・サムワン・イン・ラブ」「5 five – 小津安二郎に捧げる -」などがある。短編作品では、上述したデビュー作「パンと裏通り」を始め、「明日へのチケット」「Rah Hal-e Yek」「Man ham mitounam」「キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒」「ロミオはどこ?」「White Pages」など。

さらに監督作品以外でも、「白い風船」「鍵」「旅の途中で」「クリムゾン・ゴールド」といった作品では脚本や監修を務めたほか、1994年の作品「ドキュメント:キアロスタミの世界」には出演も果たしている。

著書に、「Abbas Kiarostami」「Havres」「Le vent nous emportera」など。

受賞歴に、ロカルノ国際映画祭銅豹賞、シカゴ国際映画祭シルバー・ヒューゴ賞、ファジル映画祭審査員特別賞および監督賞、シンガポール国際映画祭監督賞、バジャドリード国際映画祭ゴールデン・スパイク賞、カンヌ国際映画祭パルム・ドール、イスタンブール国際映画祭名誉賞、エレバン国際映画祭生涯功労賞、サンフランシスコ国際映画祭黒澤明賞、高松宮殿下記念世界文化賞など、多数。

フランスの首都パリにて死去。死因は、癌であった。76歳。パリには、同病の治療のために訪れていたという。

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